1人の個客に多く買ってもらう努力が大切
1人の個客に多く買ってもらう努力が大切
ラッキーピエログループ社長 王一郎さん
道元禅師によると、わたしたちは仏の世界で「自他一如」、自分も他人も一体だったと説いています。仕事をして、お客さまが喜ばれている姿を見るとうれしくなるのは、その神髄です。わたしたちが生き、仕事をさせていただいているということは、世の中の役に立っているという感激なのです。 わたしたちは愛の使者としてこの世界に落ち、自分の働きによって他人を愛するために存在しています。だから他人が喜ぶと、めちゃくちゃうれしいです。自他一如の悟りの世界は、働く幸せの神髄を一言で表しているんじゃないかといつも思っています。ラッキーピエロの長期戦略はお客さまを感動・感激させながら信頼関係を構築し、口コミ宣伝マンになってもらいながら、生涯買っていただくというものです。わたしたちはCS(顧客満足)の上、CD(カスタマー・ディライト)を目指しています。お客さまに感動・感激していただくことを願っています。
■ イタリアの経済学者パレートは、国民と財産の比率を研究していた過程で「80対20」という数字の法則に気付きました。その後、さまざまな経済に携わる人の調査・研究により、80対20の法則はすべての事に当てはまるという研究報告が出ています。わたしたちに当てはめてみると、総売り上げの80%を作り出しているのは20%のメニューと、ロイヤルカスタマーといわれる20%のお客さまです。わたしたちは、ものづくりをして「ものマーケティング」ばかりやってきました。この80対20の法則を考えれば、もう「ひとマーケティング」に移行しなければならないと思うのです。英・米国のマーケットでは、3割の顧客で75%の売り上げがあるといわれ、いかにチェリーピッカー(特売品だけに興味を示す客)を振り落とすか考える半面、一番買ってくださるロイヤルカスタマーに
いかにサービスするか競争しています。安売りして口ープライスハンターのお役に立っても、自分のお店には貢献してくれません。
■ 時代は、マス・マーケティングからワントゥーワン・マーケティングに入りました。Iつの製品をできるだけ多くの顧客に売り付けるのが、今までのマス・マーケティングです。ワントゥーワン・マーケティングの時代では、―人の顧客にできるだけ多くの製品を買ってもらう努力が大切です。よく「製品の差別化」といいますが、差別化はお客さまが決める権利ですから、われわれ店側は間違っても差別化という言葉を使ってはいけません。罰(ぱち)が当たります。人がまねできないようなレベルにして、初めて差別化に近づいていくのです。ものマーケティングでは商品の差別化に努めていきましたが、今度は顧客の差別化に努めるのです。 高度成長期は、新規客の獲得に絶えず努めました。人口が減っている今は、既存の顧客から絶えず新しいビジネスを獲得するよう努めなければなりません。もっと顧客の立場に立って何を欲しがっているか探し当て、皆さんが表現してあげなければなりません。「規模」から「範囲」の経済を重視する時代に変わりました。大企業より中小企業が有利になったのです。製品志向のマーケティング的視点から、顧客視点のワントゥーワン・マーケティングヘ移行が始まったのです。
■ もう一つ、勝ちやすいところで勝っていく「ランチェスターの法則」を意識しています。わたしたちは弱いのだから自分の一番得意な部分だけ集中し、一番を取るのです。一番の品目数をいかに増やしていくかが勝負です。ブランド構築は、顧客の頭に自分の特化している情報をずっと貯金させることです。大企業のようにCMを打つわけにはいきませんから、わたしたち零細企業はインターネットを使って、顧客の頭にブランディングを仕掛けることです。
北海道建設新聞 講演録(11月12日、第24回ビジネスEXPOから)